情報基盤と聞いて、何を思い浮かべますか?なんだかとても難しそうで、自分の会社には関係ないと感じている経営者の方も多いと思います。
しかし、情報基盤は、すでに会社の中に必ず何らかの形で存在しています。その例が「エクセルシート」であり「ファイルサーバー」であり、「電子メール」であり「携帯電話」です。
ただ、情報基盤と大きく異なる点は、それぞれが「バラバラ」に存在し、個別に機能している点です。
それでは、従来型の情報基盤を使った社員A君の一日の仕事を考えてみましょう。
A君は、上司から売上の集計を頼まれました。A君は、まず、社内のファイルサーバーから、売上に関する情報を集めてきます。○○部門の売上のエクセルシートと□□部門のエクセルシートを一つのシートにまとめるのですが、微妙に書式が違います。手作業でフォーマットを統一すると、何時間もかかってしまうと判断したA君。一念発起して、マクロを組むことにしまいた。
手作業で2時間かかる作業を、マクロを3時間かけて作って、集計は一瞬で完了、A君は満足です。来月、同じ集計の依頼が来ても瞬時に集計が完了できると、自画自賛していました。
翌月、また上司がやってきて、先月と同じ集計を指示されたA君。喜んでファイルサーバから資料を集めて、マクロを実行。あれ~!!、うまく集計できない!!
よく見ると○○部門の書式が大きく変わっているではありませんか。そこでA君はどうすればよいでしょうか。もう一度マクロを作り直すか、手作業で集計するか、はたまた、○○部門にクレームするか……
あるあるの風景ですね。
また、こんな日常も。
B君は、上司から企画書の作成を指示されました。短い口頭の指示を受けた後、企画書を作成したのですが、上司が出張中なので、電子メールで内容の確認をお願いしました。
しかし、上司からは何の連絡もありません。B君は、また電子メールで疑問点や相談事をメールで発信し回答を待ちます。でも、返事がありません。どんどん期日が近づいてきます。そしてある日、上司から「私の指示した方針と違うので、企画書を再度考え直すように」と指示がありました。その点については、以前電子メールで確認したはずなのに……
これもあるあるの風景ですね。
では、なにが問題で、このような生産性の悪い状況になってしまったのでしょうか。
仕事には色々とパターンがあります。
一つ目は、事業活動によって生まれる数字を集計したり、グラフ化したり、つまりエクセルベースの仕事です。このような種類の仕事は、本来、人間が行う仕事ではなくコンピュータが得意とする分野なのですが、エクセルで係数を管理していると、どうしても人間が介在しなければなりません。
はやりのRPA(パソコンに仮想ロボットをインストールして集計などの作業をさせる)という方法もありますが、所詮RPAもソフトウエアーなので、A君のマクロと同様に、書式が変ると対処できないのは同じです。
もう一つの大きな課題に、コミュニケーションがあります。仕事は人と人が、コミュニケーションをとりながら進めなければなりません。だから、場所と時間を共有するために会社に出社してコミュニケーションを図るのですが、前述のように、上司が長期出張で出社しない場合は、仕事が止まってしまうことはよくある話でした。
あれ!
この話、なんだかコロナウイルスでテレワークを余儀なくされている「今」と似ていませんか。
では、どうしたら良いのでしょうか。
そう、システムを入れれば良いのです。○○システムを導入すれば集計が楽になるし、□□クラウドサービスや△△のネットミーティングを使うと、コミュニケーションが楽になる。これで解決です。
本当でしょうか?
情報基盤整備は、システムを導入しただけでは、完了したと言えません。
実は最初に行わなければならないことは仕事の内容を精査して、整理することなのです。
エクセルによる業務報告の意味な何でしょうか?エクセルを使用しているのにワープロ化してませんか?せっかくエクセルに係数を入力したのに、また別の人が手作業で集計するなんて、生産性悪すぎだと思いませんか?
一部の人は、データの打ち直しを自分の仕事と勘違いしている人もいますが、企業としては生産性がゼロの仕事と言えます。
対応としては、情報基盤を整備して、本当に経営に必要な係数を直接システムに登録して、毎月決まった集計をシステムに任せれば、いままで集計作業を行っていた人に、人間の能力を活かした仕事をしてもらった方が企業にとっ生産性が上がります。
もう一つの課題。コミュニケーションですが、現代は時と場所のミスマッチが当然になりつつあります。テレワークもその一つです。
テレワークは、離れた人と円滑にコミュニケーションが出来るかが肝なのですが、多くの方は、従来型の管理手法、すなわち、会社で行っている手法をITで再現させるという思考から抜け出せていないのが現状です。だからテレビ会議や携帯電話による頻繁なミーティングや状況確認を頻発させ、生産性を低下させています。
仕事の本質は、会話ではなく成果です。なので、仕事の本質を考えると
①指示を出す→②指示を受ける→③質問する→④回答を受ける→⑤完了する
のように、漏れなく、ムラなく、期日までに完了できる仕組みがあればよいのです。極論ではありますが、会話は一切なくても仕事は遂行できます。それなのに、会話でしか仕事を管理できないと勘違いしている人があまりにも多いのです。
この新しい仕事の進め方も、情報基盤の一つです。仕事の指示をシステムの中で行い、一つの仕事に関するやり取りや資料などを集中させることで、前述のような確認漏れや連絡漏れによる時間のロスを防止することができます。
ここまでのお話で、情報基盤という言葉が沢山出てきました。では、情報基盤とは何でしょうか。
それは、クラウド上に自社のサーバーを持ち、会社の情報資源を一元管理できる環境を言います。
情報資源とは何でしょうか。
会社は、人、物、金で成り立つと言われていますが、現在は、「情報」が大変に重要になっています。人、物、金、全ては情報で管理しなければならない事はすでに常識です。だから、人事考課システムや入出庫管理システムや会計システムが存在し、多くの企業が導入しています。
しかし、多くはそれらのシステムを個別に導入しているため、各システム間の情報に関係性がないため、エクセルシートで集計したり、他のシートに再入力したりして情報を加工して活用しているのです。つまり、分断された情報資源をエクセルを使って、有用な情報に人力で変換しているのです。とても生産性が高いとはいえません。
それらを一元管理するということはどういうことでしょうか
一元管理とは、人や組織等を元帳(マスタ)化して管理して、それぞれのに付けられたコード(番号等)で事務を個組み立ててゆくことを言います。
そうすることで、仕事で発生するデータが自然に蓄積されます。この環境こそが情報基盤なのです。
多くの中小企業は、目先の課題を解決するために、様々なシステムを部門別に導入してきました。だから、同じ社員に部門ごとに違う社員番号が存在していて、収拾がつかない状態になっているのです。
仮に、まず「社員番号を決めてから様々なシステムを導入しよう」という人がいれば、全てのシステムから出力される情報を関連付けて利用・活用できたはずです。
しかし現実は、情報基盤を全社的に考えることができる人材が不足していたため、一元管理されることなく、投資した額に見合った効果が出せていません。つまり、失敗したと感じるているのです。現在のマイナンバー制度も似たような感じですね。
部門別にシステムが導入されていて、情報基盤がない状態では、全社的な効率化や生産性向上は望めません。ですから、まずは基盤を整備して、仕事のやり方を見直して、何を成果として考えるかという根本にまで遡って考えなおさなければ、これからの成長は望めません。
まずは、情報基盤の整備から始め、仕事の進め方を変えることで、自然にテレワークが定着し、働き方改革(働く者の価値感の改革)ができ、企業が成長路線に乗る。これこそが、失敗しない情報基盤の構築の方法だと考えます。
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